108本のぼんのう柱

浄土宗のご本尊は阿弥陀如来で大宇宙最高の仏である。
壇信徒は、本堂の中で、阿弥陀如来が支配する世界、すなわち「極楽浄土」を垣間見ることにより、救いを求めて「南無阿弥陀仏」と念仏を唱える。阿弥陀如来は、またの名を無量光仏とも呼ばれ、無限の光を放つ仏である。まさに後光が挿していて、その光で信徒の不浄な物を洗い流してくれるのである。



本堂の阿弥陀如来


不浄とはすなわち煩悩である。
ここでは、壇信徒からの寄進の証である木の柱(塔婆)を、外周の木造部から本堂に流れ込んでくるように、煩悩の数である108 本建立した。このぼんのう柱は、「阿弥陀如来の光によって滅しられ、天空の星となって極楽往生する」という物語で説明される。

本堂には床下空間を設けており、柱は下から床を貫通するように建てている。床には、冷温水の配管をはりめぐらしていて、床下に送り込まれた空気は、空調されてぼんのう柱の根本からあがってくるようにしている。また柱の根本には、調光できるLED のスポットライトを仕込んでいて、読経や堂内の催しにあわせて、ぼんのう柱が徐々に炊き上げられる演出を行っている。

この本堂は、これまで明確に区分されていた内陣と外陣の空間を一体化して、単純なシューボックス型としている。
堂内の仕上げも、内陣と外陣との一体化を強く意識して、すべてコンクリート打放し仕上げとしている。同様に空間上部も内陣と外陣を区分せずに、全体を極楽浄土の宇宙表現である奥深い格子梁で覆っている。これらは、本堂全体で御仏の力を感じてもらおうと意図したためである。これまで外陣に座る参詣者は、阿弥陀如来を遠くから眺めるような形式であったのが、この本堂では、阿弥陀如来の世界に入り、そのご加護に包まれることとなる。

また、単純な箱の形や打放し仕上げ、奥深い格子梁は、堂内に豊かな響きをもたらしている。
堂内の読経は、コンサートホールでレチタティーヴォを聞いているような感覚になるはずである。



108本のぼんのう柱







2019年10月01日