空中の竹林庭園と念仏回廊

極楽浄土の七宝樹林の曼陀羅図とスワロフスキーの念珠

都心に近接し、ビルの高層化が進みつつある両国において、回向院の境内地は、貴重なオアシスとしてこれまで以上に存在価値の高い場所となると思われる。しかし、境内地も戦前と比べれば小さくなっており、参道沿いに竹が列植されているものの、一般に公開する庭園と呼べるようなスペースはなく、都会のオアシスと呼ぶにふさわしい緑豊かな庭園スペースが望まれるところである。


また念仏堂としての設えとしても、念仏を唱える心構えとして法然上人が「一枚起請文」において三心をあげられたように、念仏を唱える環境として、俗世を引きずることなく、すんなり無心無我となれる心を落ち着かせる環境が必要であると思い、参道の竹と連続するような竹林庭園を設けることとした。地面と接するところは、境内地としての広がりが必要なので、上空に浮遊する空中の竹林庭園としている。庭園が地面と切り離されていることによって、より俗世とは切り離された心落ち着く場となるのではないかと思われる。


建物の2・3階には、この竹林の中を通り抜けるように、外部回廊が巡らせている。この回廊は念仏回廊と称し、歩きながらでも念仏を唱えられる場となるような位置付けである。空中の竹林庭園は、「無量寿経」に著されている極楽浄土の七宝林を模し、スワロフスキーの念珠が竹とともに林立する庭園としている。このスワロフスキーの念珠は、数珠と同様に1本につき108珠あり、50本以上あるため、この回廊の念珠の数だけ念仏を唱えながら2階から3階にかけてぐるっと巡れば、1万遍の念仏を唱えられることとなる。



極楽浄土の七宝樹林の曼陀羅図とスワロフスキーの念珠



空中の竹林庭園





2019年10月01日