建築基準法の用途にない施設 ~檀信徒塚~

壇信徒塚とは、継承者のいなくなってしまう檀家の仏をお寺が縁者に成り代わり永代供養するための合祀塚(墓)です。

一般的には永代供養墓(塚)とも呼ばれています。火葬された遺骨は、壇信徒塚内の納骨スペースに数年間骨壷のまま安置され、その後阿弥陀如来像に守られた地下のカロート(棺)に散骨埋葬されます。子供のいないご夫婦が申し込まれる場合も多く、先立った故人のお参りに、檀信徒塚を訪れる人がよく見かけられます。その場合は、外から檀信徒塚全体を拝むことになります。したがって壇信徒塚には毎日、誰からか花と線香が手向けられ、墓参に来たお檀家は、みな通り過ぎる時に手を合わせていくようになります。継承者がいなくなり、無縁墓になってしまうケースも多く見られる昨今において、死んでからも縁が生まれ、未来永劫寂しい思いをすることのない有縁塚と呼ばれる新しい埋葬スタイルのための施設(墓)が、壇信徒塚です。

壇信徒塚の概念をもとに施設が造られはじめたのは10年ぐらい前でしょうか。したがって、まだ建物の定型的な形が決まっていません。無縁塚から派生したモニュメンタルな屋外彫刻のようなものや、墳墓から派生した古墳のようなもの、小さなお堂ようなもの、大きなお墓のようなものなど、既存の檀信徒塚(永代供養墓)にはさまざまなタイプがあります。さらには、建築基準法も対応しておらず、墳墓と同様に適用外とされるか、納骨堂と同様に厳しい規制の適用を受けるかのどちらかを選択しないといけません。現在のほとんどの檀信徒塚(永代供養墓)は、納骨スペースを持ちつつも塚内への出入りを管理者に限定し、かつ面積を10㎡以内とすることにより、墳墓と同様に建築基準法適用外または確認申請対象外となっています。



さまざまな形の永代供養墓


求められるビルディングタイプとは

上述のように、檀信徒塚は全くビルディングタイプのない建物ですが、建物に求められていることは明確です。
まず湿気対策と換気を考えた納骨スペースが必要です。多くの永代供養墓を内覧しましたが、納骨堂が収蔵建物として機能的に建造されているのとは異なり、墓や塚の延長で造られている永代供養墓の納骨スペースはカビ臭くてたまりません。

つぎに散骨埋葬する場所が必要です。墳墓のようにカロートを埋めたり、建物の地下ピットを利用したりします。浄土とつながる神聖な場所なので、周りを荒らされないように、宗教的な意味もあわせもつ結界をつくります。さらには、拝む対象が必要となります。墓の石塔のようなものですが、多くの場合は、守護仏を祀って通りすがりの人にも拝んでもらい、新しい縁を築いていきます。

そしてもっとも求められることは、心理的なやすらぎをもたらすことで、檀家の誰からもそこに入りたい(納骨されたい)と思われるような弔いの心が込もった安心感のある建物とすることです。






2019年10月01日