明暦3年(1657年3月)に、江戸時代最大といわれる明暦の大火(振袖火事)により、10万人以上の尊い人命が奪われました。
この災害により亡くなられた無縁の人々の亡骸を手厚く葬るようにと、「万人塚」という墳墓が設けられ、無縁仏の冥福に祈りをささげる大法要が執り行われました。このときお念仏を行じる御堂が建てられましたが、これが回向院の歴史の始まりです。回向院の理念は、「有縁・無縁に関わらず、人・動物に関わらず、生あるすべてのものへの仏の慈悲を説くもの」として現在までも守られています。
計画した屋上庭園のパース
平成23年3月11日に発生した東日本大震災では、355年前に発生した明暦の大火を想起させるかのごとく、突如として多くの人々の命が奪われ、身元や身寄りの分からない方が現在でも沢山いらっしゃいます。新念仏堂の屋上には、創建当初の万人塚をモチーフにした花塚が竹林の中に設けられ、多くの無縁仏の魂を鎮め、祈りをささげる場になっています。
創建当初の万人塚をモチーフにした花塚
こうした花塚には、庭園の西側にあり、「日想観」を想起させる造りを意識しました。
「日想観」は、すべての観想に通じる基本的な修行として、日没を観じ正しく西方に向かって観想することが説かれています。
春秋の彼岸の中日における日没の方向を知り、この観想によって己の罪業を知り、極楽浄土に満ち満ちている光明がいかに明るく輝いているかを推量してください。
日没の太陽の清浄な荘厳さの観想により、罪悪にまみれた凡夫の卑小さに対する極楽世界の超越性が感じられるでしょう。無縁仏に祈りを奉げる中で、生命の尊さを改めて感じ、生きる力を頂いて、一日一日を大事に生活していきたいと思います。
水色の花はネモフィラで、花言葉は「清々しい心」「私はあなたを許す」です。
竹林の屋上庭園